決して振り返らないでください。アイルランド道路安全局のCM「Don't Look Back」
一人の高齢女性がベッドの上に寝ている。
彼女がふと振り返ると、映像はトレッキングをしている女性の姿を映しだす。何年か前のあの高齢女性の姿のようだ。また彼女が振り返ると、また映像が変わる。今度はトレッキングの時から数年前の同じ女性だ。場所は子ども部屋かな。
彼女が振り返る度に、彼女の過去が映し出されていくようだ。
子ども部屋で彼女が振り返ると、なんだか疲れた表情の数年前の彼女の姿が見えた。
次に振り返ると家の中。
もう一度振り返ると、ベッドの上。なんだか泣いているようだ。
さらに振り返る彼女。
20-30代の頃だろうか。誰かのお葬式のようだ。
また振り返ると、額をケガした彼女がそこにいる。病院だ。
彼女は振り返る。そこには車を運転する彼女がいた。
彼女は振り返る。後部座席の子どもを見るために。
振り返った彼女の車の前には、対向車が。
彼女は後部座席の子どもに気を取られ、振り返った瞬間にハンドル操作を誤ったのだ。対向車線にはみ出した彼女の車は、運悪く事故を起してしまったのだ。
だから、このCMを振り返ってみると、あの病院で彼女の後ろのベッドに寝ていたのは事故に遭った彼女の子ども。あのお葬式も、そう。
子どもを失った悲しみに、彼女は子どものベッドで泣いた。
いるはずの子どもはもう家の中にはいない。
道端では女性の押すベビーカーに反応してしまう。
時が止まったような子ども部屋で、彼女だけが年老いていく。
そして年老いた自分のベッドの横には、あの時亡くした子どもの写真が。
- 2015-06-20 (土) 8:33
- TV・CM