村上春樹さん&是枝裕和監督によるサッポロビールの箱根駅伝特別CM「走ることについて語ること」
今年も1月2日にスタートした箱根駅伝。
日テレ系列で放送されているこの駅伝中継の中で、サッポロビールが特別CMを放送しています。4篇あるこのCMのナレーション原稿は、作家の村上春樹さんが執筆。CMでは仲間由紀恵さんがナレーションをされています。そしてCM自体を監督したのは映画監督の是枝裕和さん。音楽は明星/Akeboshiさんによるものです。
WEBでも1月末まで公開されていますよ!
[追記]
ナレーション部分をそれぞれ文字起こししてみました。
[第1話]
痛みは避けられない。
でも、苦しみは自分次第だ。
あるときそんな言葉を覚えた。
そして、長距離レースを走るたび、その文句を頭の中で繰り返すようになった。
きついのは当たり前。
でも、それをどんな風に苦しむかは、自分で選び取れる。
“Suffering is optional”
へこたれるもへこたれないもこちら次第。
苦しいというのはつまり、僕らがオプションを手にしているということなんだ。
[第2話]
僕やあなたのような普通のランナーにとって、レースで勝ったか負けたか、そんなのはたいした問題じゃない。
自分のかかげた基準をクリアできたかどうか。
それがなによりも重要になる。
判断はあなた自身に委ねられている。
自分の中でしか納得できないものごとのために。
他人にはうまく説明できないものごとのために。
永い時間性をとってしかあらわせないものごとのために。
僕らはひたすら走り、また、こうして小説を書く。
[第3話]
やっとゴールのマラトン村にたどりつく。
炎天下の42kmを走り終えた達成感なんてどこにもない。
頭にあるのは、あぁもうこれ以上走らなくてもいいんだ、ということだけ。
村のカフェで一息つき、冷えたビールを心ゆくまで飲む。
ビールはもちろん美味い。
でも、僕が走りながら切々と想像していたビールほど美味くはない。
正気を失った人間の抱く幻想くらい美しいものは、この現実世界のどこにも存在しない。
[第4話]
走っている時に頭に思い浮かぶ考えは、空の雲に似ている。
いろんな形の、いろんな大きさの雲。
それらは、やって来ては去っていく。
でも、空はあくまで空のままだ。
雲はただの客人にすぎない。
通り過ぎ、消えていくものだ。
暑い日には、暑さについて考える。
寒い日には、寒さについて考える。
辛いことがあった日には、いつもより少し長く、少しきつく、一周余分に走ることにしている。
そして,後にただ空だけを残す。
村上春樹さん自信、走ることがお好きだから、ランナーの気持ちもわかるんだろう。そして「困難を乗り越え走りつづける」というメッセージはランナーへだけでなく、昨年の震災を経験したすべての人へ向けたものとなっています。
→サッポロビール 走ることについて語ること
http://www.sapporobeer.jp/kanpaispecial/
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