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[追悼] コピーライター西尾忠久さんについて

アドコレクション展

7月28日、コピーライターの西尾忠久さんがご逝去されました。
戦後の広告業界、コピーライター界の先駆けで、アメリカDDBの広告事例を日本に紹介されるなど、ご活躍されました。2003年には東京コピーライターズクラブの名誉殿堂入りを果たされています。

西尾さんとは直接の面識はありません。
が、このブログがきっかけで、Twitterのフォロワー/フォローイングとして、何度か言葉のやりとりをさせていただきました。その中から、ボクだけにとどめておくのはもったいないお話をご紹介します。

そもそもの始まりはこのブログでした。
今までに『かぶとむしの図版』『VWビートル 発想トレーニング副読本』『フォルクスワーゲンの広告キャンペーン』などの書籍を世に送り出してこられた西尾さん。2008年に、『かぶとむしの図版』の新装刊とも言える内容の『クルマの広告』を出版されました。

クルマの広告
size:174 × 110mm
発行:KKロングセラーズ
amazonでこの本を買う.

『かぶとむしの図版』を含め、西尾さんの著書は良書ながら絶版となっていて、復刊に近いこの『クルマの広告』が出版された時はすぐさま買ってブログにエントリーしました(参考:クルマの広告 大人のための絵本)。

そのエントリーになんとご本人からコメントをいただいたのです。おそらくエゴサーチされたんでしょうね。そのコメントを一部抜粋します。

紙(資源)の無駄遣いをしてはいけないと、もう、本は出さないつもりでしたが、版元の編集部長が後輩で、つい、情にほだされて—。
でも、出したからには、売れてほしい気持ちですが、それより、ポップアップに、
「モノクロでいい カラーはぜいたく」
というDDB風のコピーが書けたことのほうをよろこんでいます。
ネガティブ・アプローチ、いちど、やってみたかったのです。
日本の広告主は、なぜか、嫌いますからねえ。
大声をあげれば、売れるってものでもないのに。

チクリと刺さるコメントw
さらっと言ってしまうところがまたおもしろい。

これをきっかけにTwitterでの交流も少しですが始まりました。中でも興味深かった話は、アポロ11号の月面着陸の夕刊と、富士銀行の広告です。

アポロ11号の月面着陸の夕刊と、富士銀行の広告
(参考:(142)フォルクスワーゲンの広告(54)

アポロ11号が月面着陸を成し遂げた日の夕刊1面に掲載された富士銀行の広告には「お子さまのために きょうの新聞を保存しておいてあげましょう。」「きょう、あす・・・・・未来、皆様の 富士銀行」というコピーが。何がすごいかというと、アポロ11号が着陸成功するかどうかなんて、広告〆切り時点ではわかっていないということです。なのでどのタイミングで閃いたのかを聴いてみると、

@mifdesign はい。打ち合わせのとき、一人が「NASA計画はすごいな、月着陸が何時何分まで計算できるんだから---」ってつぶやいたんです。その瞬間、「夕刊締め切り前!」とひらめきました。サンヨー電機の宣伝部にいたとき、岩波の月1の定期掲載を真似た月1をやってましたから。 reply from @chuukyuu

とのお答え。
その時間が夕刊〆切り前、つまり夕刊の1面を飾る可能性が高い!という直感だったそうです。

続いて、このコピーで「保存」された人も多かったでしょうね、と投げ掛けると、コピーライターらしいこういうお答えが

@mifdesign おはげまし、深謝。銀行ですから、貯めるに通じれはいいとおもっただけなんです。でも、残せでは直接すぎるので、保存としました。 reply from @chuukyuu

お互いアカウントには鍵もかけていませんし、ボクだけが知っておくにはもったいないと思ったのでツイートを掲載させていただきました。

西尾さんですが、病気を患われてからもブログを更新しつづけておられました。お医者さんに入院をと言われながら、最後にインデックスをまとめる時間がない、とも。西尾さんのブログ「創造と環境」は、スタッフの方が意志を継ぎ、現在更新中の「ジャマイカ観光局・広告シリーズ」を更新されるそうです。まだご覧になっていない人がいらっしゃるなら、一度訪れることをオススメしますよ。生前はビューワー数をかなり気にされていたので、増えると嬉しいと思いますw

最後になりましたが、8月6日から12日まで、銀座幸伸ギャラリーにて「西尾忠久 アドコレクション展 vol.1」(Link)が開催されているそうですので、こちらも是非!

→創造と環境
http://d.hatena.ne.jp/chuukyuu/

  • 2012-08-09 (木) 7:42
  • 4c'sn.

コメント(閉):2

転法輪 篤 12-08-13 (月) 0:58

西尾との会話や、展示会のご紹介までありがとうございます。
アポロ11号の広告、本人も一生に一度出会えるかどうかのチャンスをものにできた、と言っておりました。

展示会は本当にたくさんの方に来ていただきました。
西尾を知らない方も、web上でしか会話していなかった方も、西尾といっしょに仕事をしたことのある先輩方も・・・。

いろいろな場所で出会った西尾のお話を伺うことができました。

『創造と環境』は引き続きジャマイカ観光委員会の広告シリーズをゆっくりと続けていきたいと思っています。
引き続き『創造と環境』をよろしくお願いいたします。

mif-4c 12-08-16 (木) 13:24

>転法輪サマ
コメントいただきありがとうございます。
西尾様には実際お会いすることはできませんでしたが、WEB上だけでもお話させていただき、ありがたく思っております。
最期まで気にかけておられた『創造と環境』も継続していただけるとのこと、一読者として嬉しい限りです。これからも『創造と環境』がもっと多くの人の目に触れて、たくさんの刺激を受けられる場所であり続けますよう、大変かと思いますが存続させていただきたく存じます。

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